大凹友数 ゴーレムガールズ2〜ふたごクリスタル〜 を読んだ。

ゴーレム×ガールズ〈2〉ふたごクリスタル (MF文庫J)

ゴーレム×ガールズ〈2〉ふたごクリスタル (MF文庫J)

ふぅ、やっと再読終わり(注・この書評を書き終えたのは再読からさら日数が経過している)。
とはいえ、いささか困り果ててもいる。
結構マジメに語れてしまう。というか、マジメに語るべき本のように感じられるからで、それをカノキシでやることにためらいもあるわけだ。カノキシはいつのまにかダメなことを書き連ねるサイトになってしまったので(はじめからではないのか)マジメなことが書きにくい。また、マジメなことを書きにくいとか言うよりは、このゴーレムガールズ2についてマジメに書くことは、書きづらいことを書かねばならないということでもあるからだ。
まあいい。それでもとりあえず書いてみよう。
前作について書いた時は、喪なカンジやエロさや作者の「業」について書いた。そもそもが現実に絶望した喪男子高校生がゴーレムの彼女を作る、というお話デスからね。半ばネタで買ったわけなだけど、それが意外に素晴らしい小説だったと。一作目の評価はそんなもんでした。
だけど二作目の評価はちょっと違う。
大凹友数は今、失ってはならない作家の一人だと思う。
これほどまで「自分が受け入れられるはずがない」という思い込みや刷り込みを持った人物はこれまでの小説で書きえただろうか。ぼくは寡聞にして知らない。(注・寡聞にして知らない、などという書き方をする人間はほぼ間違いなく読書家だが、ぼくは本当に見聞が狭く、決して謙譲の意で使っているわけではない)
多分おおくの人は、なぜここまでこの主人公の森田友二は、既に彼女の身分であるところの乾琴子にこれほどまでに臆病な接し方しかできないなのか、理解できないだろう。あるいは、そのことをして主人公にリアリティがない、という物言いすら出てくる可能性をぼくは危惧している。
だがぼくは言わせて貰おう。
この主人公森田友二はリアルだ、と。
そして「こういう人種」を描ける人間が作家になることができる時代になって、本当によかったと思っている。例えば乙一は、確かに大凹よりぼくに年代が近く、また非常に共感を覚える作家の一人だ。だが、性的なアプローチが乙一にはあまりない。(もちろん乙一にそれを求めようとは思わない)いや、性的なアプローチというと大凹の作家性を捉え損ねてしまうだろう。もちろん性は重要だ。人間は性的存在でしかありえない。だが、固有名としての自分が受け入れられるかどうか、という一点が大凹においては重要ではないか。性の問題はそれと不可分であるというだけだ。
自分を知ったら、確実に女の子はぼくを嫌う、という「確信」。
乾琴子という他者。
すみれちゃんという自分が作ったモノであり、一体的な融合と平穏(母胎回帰願望のような)が可能なモノ。
特にこの、自分は最終的には受け入れられないという「確信」は重要なファクターであり、大凹友数の小説の中心であり、しかし読者層を狭める危険性を持ったものだ。
しかし、こういった「確信」を持った人間はいくらかこの世に生きていて、その人たちのために大凹友数は小説を書いていって欲しいと思う。といいつつ、もちろんそのような連中に書く必要はまったくない。
今後森田友二がどのような成長(あるいはただの時間の経過)を遂げようとも、作家が自分に嘘をついた話にしなければ、読者は納得すると思う。
似たような系統の作家でぼくが好きな作家で個人的な比較論でいえば、滝本竜彦はと大凹友数は作家としては滝本の方が才能は上だと思う。さっき挙げた乙一は作家というよりは小説家としての比較になるだろうか。当然(といっては失礼になるが)乙一の方が小説家としても大凹より(滝本より)上だ。だが、もちろん作家同士を単純な序列にすることはできない。滝本にないもの、乙一にないものを大凹は持っている。そこを突き詰めて欲しい。大変だろうけど。
こっからはヨタ話になるけど、大凹友数はギャルゲー大好きなんだね。こう、文章や登場キャラの言葉に自然に(笑)ギャルゲーという単語が出てくる。また、「三人での恋」なんていうのもギャルゲ的発想ですよね。ええまあ、ぼくも佐祐理さんと舞との三人暮らしですから「このギャルゲ三昧のゲーム脳が、脳内汚染されてんじゃねえよ! このバーチャル世代!」などと罵ろうはずもありません。え? 佐祐理さんと舞とぼくの共同生活はバーチャルなんかじゃありませんけどね。
最後にちょっとマジメに。
大凹氏はぎこちないところもあるとはいえ、ストーリーテイリングの技術もあるし、単純なラノベに堕ちない筆力もあると思う。けど、芯の部分で大衆受けが難しいんじゃないかとも思う。だからそれをごまかす、という言い方はアレだけど、もっと物語作家としての体力をつけて、作家として生き残っていって欲しい。
それでぼくにもっと作品を見せてくれ。