マリア様がみてる 仮面のアクトレス

もしぼくのリアル友人のKさん、まだ読んでなかったらネタバレになるから読まないでね。


黄薔薇、真剣勝負」ですが、最後の

まだ手を離さないで、って言ったのに。
自転車を支えていた令ちゃんの手が、絶妙なタイミングで離れた瞬間だった。

は「去勢」の瞬間だと思った。もちろんここで言う「去勢」は精神分析用語のそれだ。去勢は事故のようにしか訪れない。その「去勢」の瞬間をうまく書いたところだと思った。
仮面のアクトレス」の方は、二年生の三人の絆が描かれていたり、祐巳が祥子に甘えたり、ほほえましかったですね。
瞳子が立候補という展開には、ああなるほど、と。
そして112ページの志摩子さんはやっぱり最高です。

「・・・・・・由乃さんの、そういうところ好き」

ああ、志摩子さん、志摩子さん。
しかし、由乃さんの立ち合い演説はちょっとひどいのでは・・・・・・。変にキャラ立ちさせ過ぎじゃありませんか? マンガっぽく。そんな由乃さんは嫌いではありませんというか好きデスけれど、作品としてのバランスというか自然さが失われていくような。だって、どんどん蓉子さまや聖さま江利子さまが神格化されるほど立派で、それと現2年生グループは乖離していきますよ? それぞれの良さがあると言ったって、ねえ。いえ、志摩子さんは現人神だからいいんですけどね!
んで、瞳子の目的はやはり「負けること」でした。やはり、とは書きながらも実際どうなるんだろうと小説世界にのめりこませる読み方になってしまうのは、やっぱり今野緒雪の筆力だろうと思います。
最後の「素顔のひととき」は息が詰まる本編の緩衝材のような、いい意味での蛇足だったと思います。