NHKにようこそ! 5巻

NHKにようこそ! (5) (カドカワコミックスAエース)

NHKにようこそ! (5) (カドカワコミックスAエース)

漫画版のNHKにようこそ!の5巻読みまして。実際に読んだのはもっと前ですけど。
2chの滝本スレ(ラノベ板)ではわりと不評なマンガ版ですが、5巻もおおむね不評でした。しかしぼくは、どうもこの5巻には批判的になれない。むしろ、マンガ版としては今までで最もいい・・・・・・いや、いいわるいと言うよりは凄い、と思っている訳デス。
21話、5巻の一コ目の話ですけれど、まさか実家に帰されるとは思わなかった。
いや、それに至る過程の話もけっこういい描写だと思ってました。ドラッグでトリップし、さらにバッドに入るあたりも悪くないし。
そして見開き2ページブチ抜きで引越し用のトラックに向かう佐藤とその父親、それを見やることしかできない山崎はよかった。
気の持ちようだけでは太刀打ちなど出来ない現実、経済や社会などに無力な引きこもり。
なにより、小説から漫画が大きく逸脱していくことを示す場面だった。
断筆宣言をした滝本が現在表立って仕事をしていることが見受けられるただひとつの作品が、この漫画の原作で、それでも滝本ファンは、結局マンガの方は小説版のNHKにようこそ!に時事ネタを乗っけたり少年誌に不適切な表現を改めたりするだけの水増し的なあまり創造的とはいえない仕事だと思っていた節があるわけだ。
それがこの回を転機にマンガが行き先の見えない方向に舵を切り出した。
少なくともぼくはそのように感じた。
そしてその回以後も見ていて痛い(イタい、とは違う)描写が多々出て来る。本当に痛々しい。あるいは、これは僕自身過去に「脳がアレだった」人間だから来る共感なのだろうか。
またある種のリアリティを支えているのが、冗談の効かないシリアスな痛みや駄目さに、滑稽としか言いようがないイタさやダメさが混在しているところだ。魅力的な汚点、胸を張れるキズ、創作物にはそんなものが溢れているが、それらはことごとくを作品からリアリティを気持ちよく奪っていくだろう。そう気持ちよく。自己同一化とナルシシズムとで。
しかし、本当86ページ真ん中のエロ絵のエロいこと!
そして、あの「ハイパーセルフプレジャー」シーンは、あまりのイタさに読み進めることが出来ず、day単位で放置してしまいました。
いやしかし、ラッシュとかオナホールとか少年誌でいいんでしょうか。
柏先輩の旦那が精神科医だとかいう設定は盆百の漫画的であまり好きではありませんし、25話の柏先輩のキレ方もやはり凡庸ですが。
150〜151ページは個人的にリアリティがあった。そう、ひきこもりとして無為に過ごす日々はかなりストレスだ。滝本自身、小説のNHKにようこそ!出版以後文筆活動をしていなかったにも関わらず、常に締め切りに追われていた、と言っている。ひきこもりは常にストレスに晒されている。胃は痛くなるばかりだ。それは抗鬱剤のせいでも抗不安薬のせいでもない。食事を残すことも罪悪感と劣等感を強化するばかりだ。
ここら辺は滝本色が強く表れているところだろう。
最後の岬ちゃんは一体なんなのか。エース本誌を読んでないので分からないけど次巻に期待だ。
総評としては、「超人計画」と内容がいささかカブッてはいるけど、それを新たなNHKにようこそ!として昇華(消化)させるスリリングさは面白いと思った。
時代はちょいオタだと思った。